2013-01-01から1年間の記事一覧

結晶

たどり着いた丘の端に立ち せいいっぱい 感覚をとぎすましてみる 世界は 小さな小さな結晶の集まりのようでもあり 端まで見えない 不穏な黒雲のようでもある くたびれたブーツに朝の露がしみこんでくる 陽が出たら ようく乾かそう 中まで からからに そうし…

4月2日

夜の間に 静かに咲いた まるで月の光が 降り積もったよう 昼間の光に 溶けそうになるけど 見上げる顔に励まされ 咲いている 露の重みに うつむくと 冬を越えたねと ひよが笑う あなたの 生まれた日に 咲いている April 2

街の記憶

笑い声が聴こえる 遠い昔に聞いたことのあるような 声を追って 角を曲がるが そこはまた 似たような乾いた道やせこけた犬が 声も無く唸る 窓からむずかしい顔をしたおじいさんが 「もう 戻りなさい」と 言う 意地になって進む町はわけのわからない形に歪んで…

闇に笑う。

いったい どれだけの年月が経ったのだろう 古びた紋様をみて怯えた子供は 疾うの昔に旅立った 何億もの雲が 陽の光をさえぎり 何百もの蝶が 羽を休めた いったい どれだけの人が 泣いたのだろう時代ごとに悲劇があった たんまり儲ける人もいたが 愛のある人…

かぜのおと。

それは古い時代の楽器の音 不協和音すれすれの淵をなぞって 心のおもてに、波紋をたてる それはきっと 風の音 暗い森を抜けてきた時に枝葉がたてた 遠い昔に聞いたきりの 忘れかけていた 孤独な音 『風神』(デコ・ジャケット展出品作) .