街の記憶


笑い声が聴こえる

 遠い昔に聞いたことのあるような


声を追って 角を曲がるが

 そこはまた 似たような乾いた道

やせこけた犬が 声も無く唸る


窓からむずかしい顔をしたおじいさんが

 「もう 戻りなさい」と 言う


意地になって進む

町はわけのわからない形に歪んで

私を ひるませようとする




そこは笑い声が 失われた町

 記憶だけが残る町



歳をとることを やめた故郷